ローマ人の物語

著者:塩野七生
発行:新潮社

単行本で全15巻に及ぶ古代ローマの歴史小説。

古代ローマを、歴史に興味がない人にも楽しく読ませてくれる。
ただ、資料に基づかない記述が多く、客観性に欠ける作品。
そのため、歴史書という訳にはいかない。

あくまでも、塩野七生の主観が軽快に語られる。

この表現力と想像力に圧倒されたまま、読み進んでいくと
そこはまさに『塩野ワールド』だ。

ローマ建国から王政、寡頭政治、帝政と、時は移り変わっても
中心人物ひとりひとりに塩野は優しい。

ユリウス・カエサルをべた褒めするのは分かる。
だが、歴史が否定する人物にも寛大だ。
大儀の名の下に必要のない粛清を重ねた“マリウス”や“スッラ”。
皇帝“ネロ”や“カリグラ”は私利私欲の申し子。
“ティベリウス”は人嫌いで首都ローマを捨てた。

塩野の感性は、この人たちをただの悪者とはしない。
必ず良いところを見出し、その生い立ち・過程を想像する。
これが単なる歴史書では終わらない、歴史小説たる由縁。

塩野の解釈を歴史家たちは肯定しない。
それは、前述した客観性に欠ける表現のせいだ。
しかし、それを肯定するも否定するも、読者が考えればよろしい。
要は、それを読んで「楽しかったか?」だ。

僕は、この作品を古代ローマのバイブルの1つに位置づけても良いと思う。
その表現が主観であろうと客観であろうと、塩野の表現には愛がある。
本当にローマが好きなんだなぁ・・・と伝わってくる。

だからローマ史初心者に奨めたい。
ここから始まる歴史探訪に幸あれ!

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日本サスペンスホラーの祖~江戸川乱歩~

この人の世界観は、いったいどうなっているのだろう・・・。
ごく当たり前の日常の中に、突如現れた奇をてらった世界。

どこにでもあるような家庭や社会が、なぜこんなことに。
ごく普通の生活を営むお隣さんに、こんな裏の顔が。

ありそうな、なさそうな。
なさそうな、ありそうな。

そんな世界観に、本を読み進めるたび出会う。

乱歩と言えば『名探偵 明智小五郎』であろう。
そして、その手助けをする『少年探偵団』。
さらに悪役の『怪人20面相』も人気があった。

だが、乱歩の醍醐味はメジャーなそれらの作品ではない。
大人には大人の楽しみと、彼が用意してくれたのは表題の世界。

そう!
サスペンスホラーだ。
推理ものとしてもよい、これらの作品はうすら恐い。
代表作『人間椅子』をはじめ、『屋根裏の散歩者』など
淡々と描かれたその裏には、背筋のゾクッとする世界がある。

こうした乱歩の大人向け作品は、短編が非常に多いのだが
中・長編にも秀作が隠れている。
僕個人としては『人間豹』『孤島の鬼』『双生児』などなど
お薦めの作品には事欠かない。

Photo_13 そうした中、江戸川乱歩を一度も読んだ事がない、そんな人には
まずは新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』をお奨めする。
これには、乱歩作品に深入りする妙薬が散りばめられている。
きっと、読破した頃には角川ホラー文庫に手を出している事だろう。

そんな大人が楽しむ乱歩の世界観を、この夏堪能してみてはいかが。

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